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ほげほげ あそ

マイナーな阿蘇の山

阿蘇の温泉 ♨

Posted on 2022-12-192024-12-06 By asohack

阿蘇地域における酸性温泉と火山性・非火山性温泉の多様性

「阿蘇は活火山だから酸性泉が豊富なのではないか」と考える方は多いかもしれません。確かに、阿蘇山は世界有数の巨大カルデラを有し、地熱資源に恵まれています。

しかし、私たちが安全に入浴できる酸性の火山性温泉は意外と限られています。現状、阿蘇カルデラ内で一般向けに利用可能な強酸性泉は「地獄温泉」程度に留まり、必ずしも「火山=酸性泉が豊富」とは言い切れないのです。

以下では、阿蘇やその周辺地域の温泉を、火山性・非火山性という形成起源や成分の違いから紐解いてみましょう。ちょっとした地球科学的な視点を加えることで、温泉の背後にある大地の物語をより深く理解することができます。


温泉の定義と基本的な区分

まず、温泉とは何でしょうか。

環境省による定義では、泉源で25℃以上の湯、あるいは特定成分を一定量以上含む地下水を温泉と呼びます。詳細は以下のリンク先をご覧ください。

環境省:温泉法における温泉の定義

この定義上、地中の熱で温まった水は、火山性・非火山性を問わず「温泉」と呼びうるわけです。
大まかに言えば、温泉は「火山性温泉」と「非火山性温泉」に分けられます。


火山性温泉

成り立ち

第四紀(約260万年前以降)に活動した火山の周辺では、地表に降った雨が地下に浸透して地下水となり、その地下水がマグマ由来の熱や火山ガスと接触して高温化します。これが地上へと湧出すると「火山性温泉」になります。

火山ガス(主成分:二酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、塩化水素など)は強酸性を示すものが多く、これらが地下水に溶け込むと、pHが低下します。その結果、酸性度が非常に高い温泉(pH1〜2前後)も生まれます。

阿蘇では中岳火口付近に、pH1前後と非常に酸性度の高い熱水が湧く湯だまりがあります。もちろん、こんな湯では入浴も飲用も不可能。強酸性&有毒ガス含有の極限環境は、一部の微生物にとっては「ユニークな生息場所」となっていますが、一般利用者には全く不向きです。
こうした強酸性泉はまさに「地球化学の実験室」。微生物学や地球外生命探査のモデル研究にも役立つ興味深い対象といえるでしょう。


非火山性温泉

温まり方と特徴

非火山性温泉は、明らかな火山活動から離れたエリアでも存在します。地球内部は深くなるほど温度が上昇(地温勾配)するため、地下深部で自然に温まった地下水が湧出すれば、それも温泉となります。

非火山性温泉は、火山ガスとの接触が少ない分、酸性になりにくく、中性〜弱アルカリ性が一般的です。穏やかな湯質が多く、硫黄臭や強い酸味はあまりありません。

化石海水型温泉

非火山性温泉の中には「化石海水型温泉」と呼ばれるものがあります。かつて海だった地層に閉じ込められた海水が、長い年月をかけて地熱で温まったものです。炭酸水素塩を多く含み、茶褐色を帯びることがあり、独特の風味と質感を持ちます。


天草の温泉と堆積地層

天草諸島では、化石海水型温泉が多く見られます。もともと海だった場所が隆起し、地層中に古代の海水が閉じ込められているためです。

この地域は堆積層が露出しており、地質観察にはもってこいです。また、苓北町には「おっぱい岩」と呼ばれるユニークな石灰質団塊があり、風化に強いこの団塊は古生物学的な手がかりになることもあります。地質学好きなら、一度は訪れたいスポットといえるでしょう。


温泉のpHと性質

温泉のpHは、水中の水素イオン濃度を反映します。大まかな目安は以下の通りです。

pH帯 性質の目安
3.0未満 強酸性
3.0~6.0 弱酸性
6.0~7.5 中性
7.5~8.5 弱アルカリ性
8.5以上 アルカリ性

阿蘇の「地獄温泉」はpH約2.8の強酸性で、硫化水素を多く含む「単純酸性含硫黄温泉」として知られます。対してお隣の「垂玉温泉」は中性寄り(現在はpH約6.3)で、熊本地震後に泉質変化が起きたことが報告されています。

温泉は「現状維持」ではなく、火山活動や地下水流動の変化に伴って性質が変動します。そのため、泉質の継続的なモニタリングは火山予知や地球科学研究に重要な手がかりを与えてくれます。


阿蘇における酸性泉事情

阿蘇カルデラ内で入浴可能な酸性の火山性温泉は、現在はほぼ「地獄温泉」だけ。
かつて「湯の谷温泉」という酸性硫黄泉が名湯として知られ、昭和天皇も入浴された由緒もありましたが、経営難により閉鎖され、その後は地熱発電所として転用されました。地熱発電は再生可能エネルギーとして期待されていますが、自然環境や景観への配慮が不可欠です。

こうした資源開発には、国や自治体が自然保護を念頭においた厳格な規制を行い、持続的な利用を図ることが求められます。阿蘇独特の自然環境と景観、美しいカルデラの風情を守りつつ、温泉・地熱資源を上手に活用することが重要なのです。


垂玉温泉と泉質変化

垂玉温泉は、熊本地震後に泉質が変化してpH約6.3の単純温泉となりました。
以前は酸性寄りだったとされますが、今では牛乳と同程度のpH(約6.3)です。
総硫黄2mg/kg以上を含めば法律上「硫黄泉」となりますが、この閾値に満たないため、垂玉温泉は「単純温泉」に分類されています。ただし、若干の硫黄成分は含まれ、その影響で硫黄温泉的な性質もかすかに残っています。

温泉成分の微妙な変化は、地下水循環や火山活動の変遷を映し出す「自然の計測計」です。定期的な成分調査は、将来の火山噴火予測や地質学的研究への貴重な参考情報となります。


地域別の泉質バリエーション

阿蘇谷側では硫酸塩泉が見られ、これは地下深くで続いている本塚火山の影響が示唆されています。
一方、南郷谷(南阿蘇)は非火山性温泉が多く、深成岩や花崗岩由来の地熱で温められた地下水が炭酸水素塩泉を形成しています。

このように、阿蘇周辺では火山帯特有の硫酸塩泉から、非火山性の炭酸水素塩泉まで、多彩な温泉が点在しています。


おわりに

阿蘇や天草一帯は、多様な地質・地形・水文条件が織り成す「温泉のワンダーランド」です。

強酸性泉は限られるものの、変化し続ける泉質はまさに生きた地球科学の教材。
飲み物や食べ物の酸度(レモンや酸味飲料のpHは約2〜3)を思い出せば、地獄温泉がpH2.8程度という驚きに親近感すら覚えます(もちろん、温泉は飲用不可ですが)。

温泉はリラクゼーションだけでなく、火山活動や地下水循環、地質時代の環境記録など、多様な側面から私たちに「地球の物語」を語りかけています。

ぜひ、阿蘇や天草を訪れた際には、温泉の成り立ちや泉質の裏に潜む壮大な地球史にも思いを馳せてみてください。大地の鼓動を感じながらの湯浴みは、きっと一味違った感慨をもたらしてくれることでしょう。

未分類, 温泉

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