阿蘇山といえば中岳噴火口
中岳
1,506m
根子岳, 高岳, 中岳, 烏帽子岳, 杵島岳
ねこだけ, たかだけ, なかだけ, えぼしだけ, きじまだけ。
阿蘇山といえば中岳噴火口:お釈迦様の寝姿から火山活動のロマンへ
中岳とは?
標高1,506m。阿蘇山を代表する火山の一つ、中岳。
阿蘇山には以下の五つの山があり、これらを総称して「阿蘇五岳」と呼びます。
- 根子岳(ねこだけ)
- 高岳(たかだけ)
- 中岳(なかだけ)
- 烏帽子岳(えぼしだけ)
- 杵島岳(きじまだけ)
これらを北側の大観峰(だいかんぼう)から眺めると、まるでお釈迦様が横になっている姿に見えると言われています。
ちなみに、この「見える・見えない」は完全に個人の感性次第。視点と想像力さえあれば、お釈迦様どころかドラゴンの背中にも見えるかもしれません。
中岳の火口構造:三重奏の舞台
中岳の火口は、「古期山体」「新期山体」「最新期火砕丘」という三重構造でできています。これはまるで、歴史の異なる3層のステージが一つに重なり合っているようなもの。各ステージにはそれぞれの物語があります。
古期山体:最古の舞台
約1万~2万年前に活発な活動をしていた時代の火口です。この頃、溶岩が大地を広く覆い尽くし、古期山体を形作りました。
新期山体:中間層のスター
新期山体は約4,000年前に活動し、現在の中岳に近い姿を形作りました。新期山体から流れ出た溶岩流は、地質調査によってその分布が確認されています。現在の砂千里や阿蘇カルデラ内の地形に大きな影響を与えたと言われています。
補足
新期山体の溶岩流が約4,000年前に形成されたというのは、地質学的な調査による推定値です。ただし、「約4,000年前」というのはあくまで目安であり、正確な年代は研究者の間で議論されることもあります。
最新期火砕丘:現在も活動中の主役
最新期火砕丘は、現在でも活動を続けている中岳の最も新しい構造です。ここからは、噴煙がモクモクと上がり、阿蘇山の象徴的な風景を作り出しています。とはいえ、最新期火砕丘から溶岩流が流れ出たという記録は今のところありません。今後どのような活動を見せるのか、科学者たちも目を光らせています。
現在活動している火口の外側の新期山体は約4000年前に活動、古期山体は約1万~2万年前に溶岩も流し活動していたとされています。
新期山体から流れ出た溶岩流は地質の調査からわかっています。
4000年前の出来事です。
4000年前の噴火を想像してみる
地質学的には約4,000年前、新期山体が活発に活動し、巨大な溶岩流が広がったとされています。その様子を現代の目線で想像してみると、まさに「地球が怒っている」としか言いようのない光景です。
イメージしてみてください:
4000年前、夜空は赤く染まり、山肌を溶岩流が流れ落ちる。高温の火山ガスが吹き上がり、周辺は灼熱地獄。そんな状況を目の当たりにした古代の人々がどんな反応をしたかを考えると…恐ろしいですね。
阿蘇中岳と火口群:7つの火口と砂千里の物語
この最新火口丘にある火口は現在7つ
中岳と火口の謎めいた並び
阿蘇山中岳といえば、その山頂付近には複数の火口が連なっていることで知られています。現在の中岳火口群には7つの火口があり、北側から順に「第1・第2・第3・第4・第6・第7・第5火口」の並びで存在しています。この番号の並び方が少し独特で、「第5火口が最後」というのも、ちょっとしたトリビアです。
第7火口方面から眺めると、その下方には「砂千里(すなせんり)」と呼ばれる広大な砂地状の平原が広がっています。この地形は新期山体(現在活動している中岳や高岳などの中央火口丘群)と古期山体(より古い活動期に形成された山体)の境目付近に形成された堆積物が露出していると考えられています。この砂千里は約4000~5000年前以降の火山活動により形成されたとされ、噴出物(火山灰や火砕流堆積物)の蓄積によって作られた場所です。その荒涼とした独特の景観は、多くの観光客や火山研究者の関心を集めています。
阿蘇火口群の活動記録:観測の歴史
阿蘇山の火山活動に関する観測が本格的に始まったのは1930年頃のことです。当時の記録では、第1、第2、第4火口が活発に活動しており、その中には第4火口から火山灰を噴出している貴重な写真も残されています。これらの観測記録は、近代火山学の黎明期における重要な資料となっています。
その後、阿蘇山の火山活動は徐々に沈静化し、第二次世界大戦後には第1火口と第2火口のみが活動の主役となりました。さらに近年に至っては、第1火口が中岳の主たる活動口として知られ、現在も噴煙や火山ガスの放出を続けています。
砂千里:火山活動が作り上げた広大な砂地
砂千里は、新期山体と古期山体の火口底地形として約4000~5000年前以降の活動によって形成されたとされています。この場所は火山灰やスコリア(火山砕屑物)が長年にわたり堆積し、その後の風化や侵食によって砂状の地形が広がる独特の風景を形作っています。
植生が乏しいため、火山地帯特有の荒涼とした景色が広がり、地球の息吹を感じることができるエリアです。
阿蘇山の火口群を巡る考察
阿蘇山中岳の火口群や砂千里の物語は、火山活動の歴史を知る上で重要な手がかりを与えてくれます。特に、1930年代以降の火口群の活動記録は、近代火山観測の重要なデータとして残されています。
- 7つの火口:それぞれの特徴を持つ火口群は、阿蘇山の地質的な多様性を象徴しています。
- 砂千里の形成:長い年月をかけた火山活動と堆積物の蓄積が生み出した広大な地形。
- 観測史の進展:第4火口からの噴火写真は、当時の火山活動を知る貴重な資料です。
阿蘇山は現在も活発な火山であり、その動向は観光や地元住民の安全だけでなく、火山研究の分野でも注目されています。
まとめ
中岳火口群の歴史や砂千里の広がりは、阿蘇山が長年にわたって火山活動を続けてきた証拠であり、その活動の足跡をたどることで火山の壮大なスケールを感じることができます。これからも阿蘇山の活動を注視し、その魅力と自然の力強さを学び続けていきたいものです。