本塚火山 (ほんつかやま)
左から(灰塚、本塚、北塚)
概要
本塚火山は、約4万年前に阿蘇カルデラ内で活動した火山です。この火山は、阿蘇カルデラが湖(カルデラ湖)を形成していた時期に、水中での噴火によって成長を始めたという特異な成り立ちを持っています。
その後、成長した火山体が湖面に顔を出し、通常の陸上火山活動に移行しました。本塚火山は、古代の阿蘇カルデラ湖の存在を証明する貴重な地質的証拠を提供する山として知られています。
成り立ち:水中火山から陸上火山へ
本塚火山の低層部では、水中溶岩(ハイアロクラスタイト)が見られます。
これは、マグマがカルデラ湖の水中に噴出し、急速に冷却された際に形成されるガラス質の溶岩です。このプロセスは、水とマグマが直接接触することで起きる「水蒸気爆発」などを伴い、通常の陸上火山とは異なる特徴的な地質を形成します。
本塚火山は、その後カルデラ湖の水面を突破して陸上火山として成長しました。この段階では通常の溶岩流や火山砕屑物が見られるようになります。本塚火山の地層には、水中活動から陸上活動への移行過程が記録されており、火山学的にも非常に貴重な研究対象です。
古代カルデラ湖の存在証明
阿蘇カルデラは、ASO-4(約9万年前)の巨大噴火後に形成された広大な凹地形ですが、これが一時的に湖(カルデラ湖)を形成していたと考えられています。本塚火山の成り立ちは、このカルデラ湖が確かに存在していたことを裏付ける直接的な地質的証拠となります。
本塚火山のような水中火山の存在は、カルデラ湖の規模や深さ、湖水の消失プロセスを解明する上でも重要です。カルデラ湖の消失後、阿蘇地域は現在のような火山地形へと変化していきました。
ユニークな小話:古墳と勘違い?
本塚火山の特徴的な形状は、古墳に似ていることから、かつては「古墳ではないか?」と考えられたこともあります。しかし、その正体は約4万年前に活動した「火山」。古墳を思わせるシルエットは、溶岩の層が積み重なった結果できたものです。
この誤解は、火山学における「山の形状と成因の関係性」を再確認させてくれる興味深いエピソードでもあります。現在でも、地形学や火山学の目で見ると、単なる「山」や「丘」に隠された火山活動の歴史が浮かび上がることがよくあります。
地質学的意義
本塚火山は、阿蘇火山地域の成長過程を理解する上で欠かせない存在です。
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カルデラ湖の存在証明:
水中火山活動の痕跡が、古代カルデラ湖の存在を示しています。 -
水中から陸上への移行過程:
火山活動のプロセスが地層に明確に記録されており、火山学や地質学の研究材料として重要です。 -
阿蘇カルデラ内の火山活動の多様性:
本塚火山は、阿蘇カルデラ内における多様な火山活動の一例であり、その成り立ちや特徴が地域の地質史に新たな知見を与えています。
まとめ
本塚火山は、阿蘇カルデラの地形形成史や火山活動の多様性を理解する上で極めて重要な役割を果たしています。約4万年前の水中噴火という特異なプロセスを経て成長した本塚火山は、単なる「山」ではなく、古代カルデラ湖の存在を物語る地質的な証拠そのものです。